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かつて溶接や配管の工事現場で働いていた望月運転士の場合 |
ふとした縁が人生を左右するって本当ですね。
「バスの運転士か、悪くないな…」。それまで考えもしなかった仕事でしたが、いつのまにか、その気になっていました。 その頃、工事現場で溶接や配管の業務に従事していました。社会に貢献している自負もありましたが、自宅から会社まで遠く、毎朝夕の通勤が苦になり始めていました。そんな折り、所属していたソフトボールチームのBBQが催され、しずてつジャストラインの運転士をしていた方に「うちで働いてみないか」と…。お肉を頬張りながら、適当に相槌を打っていたのですが、バス会社ならではのアットホームな職場の様子などを聞いているうち、次第に心が傾いて、自分がバスを操っているイメージが現実のもののように思われてきたのです。あの日、あのお誘いがなかったら、と考えると感慨深いですね。 |
お乗せしているのは、この街を彩る無数の暮らしです。
運転は好きです。どちらかといえば得意なほうかもしれません。大型2種免許を取得したのは入社後で、会社の支援制度のおかげでスムーズに取れました。さらに3~4年ほどして高速バス運転士の登用試験を受け、こちらも無事にパスできました。以来、路線バスと高速バスの二足の草鞋を履いています。 朝はビジネスマンや学生さんの通勤通学。日中はお年寄りの皆さんの病院通い。車内の会話を耳にするのも楽しいですし、車窓からは人々の散歩姿も見られます。路線により曜日により時間帯により、お客様の表情も街の風景も変わります。路線バスを運転する楽しさは、飽きることがありません。 |
一方、高速線は東京方面と大阪方面を担当しています。高速バスの場合、長い距離を1人で目的地まで走り通さなくてはなりません。達成感はそのぶん大きいかもしれませんね。
妻と3人の娘が乗ってきた日のことは忘れられません。
自宅は清水区の山手のほうにあります。妻や娘たちは清水の街へよく買い物に出かけます。私のバスの通過時刻に合わせて、わざわざ出てくることもあり、3歳と1歳の2人の娘は「あっ、パパだ!」と手を振ります。妻のおなかの中にいる3人目の娘と、4人揃って乗ってきたこともあります。その妻も、特に口にはしませんが、早出の朝食やお弁当をこしらえるなど、何くれとなく私の仕事を応援してくれています。 |
そんな家族のためにと、この仕事を続けて10年以上過ぎました。プロドライバーとして大切なのは何より安全運転です。お客様はそれぞれに家族や暮らしをお持ちの方々なのですから。こうした想いを胸に秘めて働いていることを、家族は理解してくれているみたいです。どんな仕事も社会に貢献しているのだと思いますが、中でもバスの運転士は、小さな子にも説明なしで、それが分かる仕事なのかもしれません。自分の中の小さな誇りが消えない限り、この仕事を続けたいと思っています。
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